Q1.非嫡出子だと相続の範囲はどうなりますか?

【弁護士の解答】

相続人の範囲や法定相続分の割合は、被相続人の死亡した時期によって異なります。昭和56年1月1日以降に開始した相続には現行民法が適用されます。ただし、嫡出でない子の相続分には時期によって次の違いが生じます。

(1) 平成25年9月5日以降に開始した相続

嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分と同等です(平成25年改正による改正後の民法900条)

(2) 平成13年7月1日から平成25年9月4日までに開始した相続

嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分と同等。ただし、遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響しません。

(3) 平成12年10月から平成13年6月までに開始した相続

非嫡出子の相続分について、争いがある状況です。

(4) 昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に開始した相続

昭和55年法律51号による改正前の民法が適用されます。ただし、昭和37年に改正がなされており、その前後で若干の相違があります。

(5) 昭和22年5月3日から昭和22年12月31日までの間に開始した相続

「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」(昭和22年法律74号)が適用されます。

(6) 明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に開始した相続

旧民法が適用されます。

(7) 最高裁大法廷平成25年9月4日決定(参考)

「遅くとも平成13年7月当時には民法900条4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分を2分の1とする部分は憲法違反であるが、この違憲判断は、同月から平成25年9月4日までの間に開始された相続について、遺産分割の審判などにより確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさない」と示しています。

 

Q2.養子の子は養親の代襲相続ができますか?


【弁護士の解答】

被相続人の子の子が代襲相続人となるためには、その子が被相続人の直系卑属でなければなりません(民法887条②但し書き)

養子縁組の親族関係の発生について、「養子」と「養親及びその血族」との間に血族関係が生じるとされていますが、「養親」と「養子の血族」との間に血族関係が生じるとはされていません(民法727条)。

養子縁組後に出生した養子の子については、出生時において既に養子と養親との間に血族関係が生じており、養親の直系卑属となるため、代襲相続権があります。しかし、養子縁組前に出生した養子の子については、代襲相続権はありません。

【参考条文】

民法

(子及びその代襲者等の相続権)

第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(縁組による親族関係の発生)

第七百二十七条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

Q3.養子には、実方の父母及びその血族の相続について相続権はありますか?

【弁護士の解答】

あります。特別養子には、特別養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続権はないですが、普通養子には、養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続権があります。特別養子については、特別養子縁組により実方の父母及びその血族との親族関係が終了するとされています(民法817の9)。しかし、普通養子については、そのような規定はなく、実方と養親双方と血族関係があることになります。

Q4.相続人廃除してもその子に代襲相続はありますか?

【弁護士の解答】

あります。民法887条2項は、被代襲者の死亡のみならず、被代襲者の相続欠格及び廃除も代襲原因として規定しています。

【民法】

(子及びその代襲者等の相続権)

第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(相続人の欠格事由)

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

Q5.遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となりますか?

【弁護士の解答】

遺言書を破棄、隠匿した相続人であっても、その行為が相続に関して不当な利益を目的とするものなかったときは、民法891条5号の相続欠格者に当たらないとするのが最高裁の立場であり、単に検認申立てをしないというだけでは、当然に相続欠格事由に該当しない(最高裁平成9年1月28日判決)。

【不当な利益目的の有無の判断基準】

遺言書の内容が当人にとって不利か否か、まわりのものが遺言書の存在を知っていたか、公正証書遺言のように検索可能か、などが基準です。しかし、有利な遺言書だったとしても、遺留分減殺請求をおそれて秘匿していた相続人が、相続欠格に該当するとした判例もあります(東京高判昭和45年3月17日)。